小説「五分後の世界」村上龍

■内容

主人公の小田切が別の日本であるパラレルワールドに迷い込むよころから始まる。

5分ずれた戦闘が繰り広げられる世界、そこは日本であった。

日本国民は小田切の知る日本と比べ26万人と少なくエリートとされ、

移民が増え続け混血の者は準国民になりたくて必死であった。

日本国民の戦闘能力は極めて高く、外国からの依頼を受けて兵士を派遣し

戦闘するほど恐れられていた。

小田切はそんな世界で死なないように、必死に生きることだけを考える。

それは「ゲリラの本質」であった。


アンダーグラウンドという地下に潜む日本国民は勇気とプライドを持ち、目的のために

最高度の効率と熟達を身に着けること、すべてにおいて簡潔明瞭であった。

敬語は責任の所在が曖昧になり、伝達のスピードが遅くなるため、

みな敬語を使わない。世界の郷土芸能と呼ばれるものとは正反対に位置するように

世界中の誰でもわかるやり方で世界中が理解できる方法と言語と表現で、我々日本国民の

勇気とプライドを示し続けること。

それが次の時代を生きるみなさんの役目。

作中にはワカマツが音楽家として勇気とプライドを示している、それと反対に

日本の勇気もプライドもなく、口だけで日本の伝統という描写もあった。

最後小田切の決断は日本国民にはない感情で動いていた。

■感想

圧倒的に長い戦闘の描写は小田切の心理状態の移り行きを描いていて、長い描写にも退屈

しない。アンダーグラウンドの兵士、ミズノ少尉は戦闘能力、交渉能力ほかのすべてに

おいて優れているが小田切に助けれられたり、仲間と談笑する場面もあったり効率や

スピードとは無縁の人間味の部分もあって少し安心した。

あとがきで「読み物」自分の輪郭を捉え固めるもの、「小説」読後に自分自身に何か

変化が起こり、何かをやり直したくなるもの、と書かれておりその通りと思った。

必要以上に描かれない小田切、兵士の心理状態から熱い勇気とプライドを感じられ、

現代の日本とは別の世界として書かれている世界であるが、これからの日本の歩み方、

進むべき道を提示されているような感覚が残った。

■名言

教科書「敵にもわかるやりかたで、世界中が理解できる方法と言語と表現で、われわれの

    勇気とプライドを示しつづけること、それが次の時代を生きるみなさんの

    役目です。」

ミズノ少尉「敬語は責任の所在が曖昧になる。伝達のスピードが落ちる。」

ナガタ「日本の伝統を守る日ノ根村にようこそって言うんだよ、信じられるか?

    娘を国連軍に売るような真似をするくせに、日本の伝統だって言うん

    だぜ、」


まとまる、鍛える、備える

城山三郎著である「秀吉と武吉」の言葉に感銘と限界を感じる31歳

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